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書評 『梟』 第15号 梟の会発行

1 米沢市で文芸の旗をなびかせて、精力的に活動する「梟(ふくろう)の会」が発行する同人誌。平成22年の発足から15年余り、会員の出版や次々と大賞を受賞するのは同会の素晴らしい前進を物語る。
 清野春樹氏は、『山形県のアイヌ文化』、北条剛氏は「ノノレタ」で、2024年11月の山新文学賞に佳作入選した。そして作家の養成にも地道に実績を積み重ねている。令和7年は、第16期小説、エッセイ講座を年四回開催した。「梟の会」では、お互いに作品を持ち寄って頻繁に合評会を開催している。年々、『梟』に掲載される内容の質、量ともに向上しているのも頷ける。
 さて第15号には12編が揃った。神尾潔氏の「藤の花」は、高齢女性の葬儀を取り上げた。亡くなった女性の息子さんが自治会長に死去のことを知らせる。女性の人となり、家庭環境、そして入棺から葬儀までの経過を模様を細かく描き切る。弔詞が日本赤十字社のもののみで、「これじゃ駄目だ、このまま終わってはトミさんに申し訳ない」と自治会長は、何も準備していなかったが手を上げて、即興で弔辞を述べる。そこでトミさんは毘沙門さまのある境内の枝を拾い集め、荒草を引き抜いて、落ち葉を拾い、雪掻きをしていたことを述べる。「その姿は、尊く毘沙門さまの守り神のように神々しいものでした」思わず悲しいはずの葬儀が故人の優しい人柄に包まれて、和やかな雰囲気になっている。
 山形県立米沢栄養大学、同米沢女子短期大学学長を務めるフランス文学者の阿部宏慈氏は、「大男」と題して、「春」、「祭り」、「海鳴り」の3編からなる小説。状況描写がとても素晴らしく、臨場感に溢れている。
 清野春樹氏は、「十歳の頃のアソビ」。タイトルからして自分の過去のノスタルジアを引き起こしてくれ、思わずページをめくりたくなる。自転車で遊び回ったことや、カレーライスを食べた思い出、アイスキャンデーを自転車で売りに来る商売人。清野氏は、十二歳の時に吉川英治の『三国志』を読んで夢中になったという。素朴で無邪気な十歳の頃の思い出がちりばめられている。あー、『梟』は読んでいて実に楽しい。

発行者 グループ 梟(永井泰廣)
発行日 令和5年5月20日